一戸建てのデメリットの解消(広島県/労働基準監督官/29歳/女性)

私は広島県に住む29歳の労働基準監督官です。私のコメントが、少しでもあなたのマイホーム購入のお役に立てれば嬉しいです。


人はどのように住まうか、最大の関心事の一つです。戦後の住宅政策は、住宅不足の解消からはじまりました。政府は公営住宅をはじめ、公団住宅、公社住宅の公的主体による住宅の供給のほか、住宅金融公庫による低利貸し付けによる民間住宅の供給の促進をしてきました。高度経済成長に伴う人口の都市部への流入に対応した集合住宅の建設が昭和40年代から50年代にかけて大量に行われたのです。平成に入って、安定成長期を迎えた日本では、このように建設された大量の集合住宅の老朽化が問題になっています。一戸建てと比べて、その建て替えのための住民合意は困難です。マンション所有権は、住宅の建て替えを含めた長期で考えると、かなり権利としてのデメリットの大きなものといえるかもしれません。


それでは、一戸建ての方にはデメリットはないのでしょうか。一戸建ては集団で管理しているマンション等の集合住宅と比較すると、隣近所による助け合い、治安対策などの安全面、暖房等のエネルギー効率などの点で劣っています。元来、集合住宅の発想は、戦後のドイツで起こったのがはじまりで、その思想の元はフランスの建築家ル・コルビジェによります。人は、都市空間に重なりあって住まうべき、という彼の考え方の源泉は、まさに、住まう人と人の関係を重視し、人が協調し、助け合って生きるということを基本としているのです。したがって、集合住宅の老朽化をどのように経済的負担を行う仕組みをつくり、住んでいる人の流動化を図って、新しいものに再生させていけるかが、集合住宅のデメリットを解消し、コミュニティを再生して次世代に引き継いでいく社会の知恵が今ためされているといえるでしょう。